どこにもいかないで
「音楽?」
「いや、待って! オレ、当てるわ! 高浜くんが何を聴いている人か」
「そんなのわかるの?」
「……」
「……」
「……わ、わからん!」
「わかんねーじゃん!」
またふたりでケラケラ笑う。
すると、後ろの座席に座っていた女子が、
「田嶋、いいかげんなことばっか言ってるじゃん」
と、話しかけてきた。
オレを見て、
「高浜くんだよね? 私、隣のクラスの長澤。小学校一緒だったよ」
と、自己紹介してくれた。
「あ、うん。長澤さん。……多分、小六の時に」
と、オレが言い終わらない内に、
「そう! 同じクラスだったの!! 覚えてくれてたんだ〜」
と、被せて話す。
田嶋くんに、
「私、覚えられてたー」
と、長澤さんがわざとらしく言うと、
「うぜぇ。何のマウントだよ、マジで」
と返事した田嶋くんは、それでも特に嫌そうな顔もせずに、ニコニコしながら返事していた。