どこにもいかないで

(オレ、話している……)



ふと、そう思うと。

ものすごく嬉しくなってきて。

鼓動がドキドキ、踊り出した。



「……ちょっと、高浜くん、聞いている?」
と、長澤さんが言う。



「え? いや、……うん。あの、ふたりは友達なの?」



オレの言葉を聞いて、ふたりともきょとんとした顔をする。

それから、
「えー、どうだろう?」
と、長澤さんがいたずらっぽく言うと、
「何だよ、友達ですって素直に言えよー」
と、田嶋くんも笑う。



(いいな)



ニコニコ笑っているふたりを見ていて。

ふいに、澪を思い出した。



「高浜くん?」



田嶋くんがオレの顔を覗きこむ。



「あ、ごめん。オレ、友達いないから、羨ましくて」



慌てて、思っていることを素直に言ってしまった。



「や、あの、違う! そんなんじゃなくて……」
と、言い訳しようとすると、
「なんだぁ」
と、田嶋くんがニッコリ笑った。
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