どこにもいかないで

「そしたらさ、オレと友達になろうぜ! いや、もう友達だったわ!」

「えっ」

「『えっ』って、まさか、嫌だったりする!? やっぱり孤独を愛するさすらいの人!?」



田嶋くんも慌てだして、長澤さんが、
「何言ってんだよ、ひとりで」
と、ツッコむ。



三人でゲラゲラ笑った。

こんな楽しい時間は、久しぶりだった。






学校に着いて。

二年一組の教室に入る。



自分の席に座って、
(オレ……、友達が出来たんだ)
と、ぼんやり考えると、嬉しくて顔がニヤついてくる。



ふいに、窓のほうを見た。



あれから何度も、澪が住んでいた山小屋に行こうと思ったけれど。

どうしてなのか、山小屋に行けない。

道を間違えてしまうみたいで、どうしても辿り着けない。



山小屋の裏の、澪のお墓に手を合わせたいけれど。

それが叶わないまま、今に至っている。



(澪、友達が出来たよ)
と、心の中で呟く。
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