どこにもいかないで
えっ!?
教室内がざわつく。
「ご家族によると、学校からはきちんと下校したそうです。でも、そこから夕食までの間に散歩に出かけて、行方がわからなくなったみたいで……」
「先生、それって」
と、伊東さんが言う。
「失踪しちゃった、ってことですか?」
川田先生はそれには答えず、
「……どこか心当たりがある人はいますか?」
と、教室内を見渡した。
ざわついたままの教室内で。
オレは呆然としてしまった。
駒澤くんが?
昨日、初めて話した時には。
穏やかな雰囲気で、自分から失踪なんて考えているようには見えなかった。
(もしかして、何かの事件や事故に巻き込まれた?)
心配する気持ちが、どんどん不安な色に染まっていく。
駒澤くん。
大丈夫だよな?
ひょっこり帰って来るよな?
そしたら、オレ。
今度はちゃんと話しかけるから。
楽しいこと、いっぱい話そうぜ。
だから。
だからさ。
(無事でいてくれよ)