どこにもいかないで
「へぇ、こんな感じなんだね。校舎の外」
「え? うん」
(……ダメだ。会話が続かない)
人と話すことに慣れてないから、何をどんなふうに会話すればいいのか、今のオレにはわからない。
「高浜くん……」
と、佐田さんは言った。
「駒澤くんとは、友達だったの?」
その質問に、オレは俯いた。
「……友達っていうか」
と、言葉を切って、少し黙ったあと、こう続けた。
「友達になりたかった、って言ったほうが正確」
「なりたかった……、そっか。そうだったんだね」
「うん」
「あまり落ち込まないでね」
佐田さんはそう言って、形の良い目を細めた。
「うん、ありがとう。ひょっこり帰って来るかもしれないし」
「……」
佐田さんは曖昧に笑う。
(もう帰って来ないって思ってるんだろうな)
だって。
失踪した村の人達が、今まで帰って来たことはない。
(駒澤くんは帰って来てくれよ)
みんなが諦めても。
オレは祈り続けるから。