どこにもいかないで

一部の女子が、
「なんであんなに平気な顔をしていられるんだろう?」
とか、
「ずっと学校に来ていなかったからって言っても、冷たいよね?」
とか、ひそひそと話していて、オレは冷ややかな目で彼女達を見た。



(この間まで佐田さんをチヤホヤしていた奴らなのに)



ちょっと時間が経つと、こんなふうに手のひらを返すんだな。

それってどっちが冷たい人間なんだよ。










それから、学校がもっとつまらなく、退屈な場所になった。

出来ることなら、もう行きたくない。

でも。

登校しないと、父さんや母さんが心配する。






教室にひとりでいることには、絶対に慣れているはずなのに。

誰とも話さない日々を、最近まで何とも思っていなかったはずなのに。



オレは。

教室のどこかに。

駒澤くんを探してしまう。



もういないって、わかっているのに。






「高浜くん、ちょっといい?」
と、川田先生に呼ばれたのは、駒澤くんのお通夜から一週間と少し経った頃。
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