どこにもいかないで
やって来たバスに乗りこみ、ゴミ捨て場に集まっているおばさん達を見た。
山姥なんて、非現実的な話をしているから、もしかして冗談で言っているのかと思ったけれど。
おばさん達は顔を真っ青にして、誰ひとり笑ったりしていなかった。
オレ達の住む村にある中学校は、山の中にある。
それまではオレの住む村の子どもと、隣の村の子供が、少し離れた隣町の中学校に通っていたらしいけれど、通学時間がかなりかかることを考慮して、山を削って中学を建てたらしい。
二つの村の中学生が通っているとはいえ、生徒数はかなり少ないし、オレらの学年も少人数で二クラスしかない。
いつも通り遅刻ギリギリの時間に、オレは昇降口で上靴に履き替え、二年一組の教室までノロノロと歩く。
教室に着くと、ざわざわしたクラスメイト達のおしゃべりの波が、行ったり来たり。
その波にオレが乗れたことは、一度もない。