どこにもいかないで
佐田さんと一本道を歩いてバス停までやって来た。
バスが来るまで、まだ少し時間がある。
「高浜くん、さっき……」
「え?」
「さっき、先生と話している時、つらそうだった」
「……」
佐田さんはバス停のベンチに腰掛け、ため息を吐くように空を見上げる。
「もしかして、オレのこと助けてくれたの?」
「助けるっていうか、まぁ、先生から離したほうがいいのかなって思ったの」
「じゃあ、質問って……」
「うん。特に聞きたいことなんてなかったの」
佐田さんはニコニコ笑って、
「うまくいって良かったけど」
と、いたずらっ子みたいに舌を出した。
つられてオレも笑顔になる。
そんなオレを見て、佐田さんは嬉しそうにまた笑った。
「……駒澤くん、死んじゃったね」
佐田さんが言った。
「うん。まだ信じられない気持ちもあるんだ」
と、オレは素直に答えた。
「今でも、教室のどこかに駒澤くんがいるみたいな気すらしてくるんだ」