どこにもいかないで

「たか、高浜? だ、誰?」
と、むっちゃんは小声で言いながら、ひーちゃんを小突いている。



「私も聞きたい」
と、佐田さんもやって来た。



「えっ! 美人!! 誰!?」



むっちゃんがプチパニック状態で、今度はオレを見る。



「オレと同じクラスの佐田さん」

「佐田……、佐田さん……?」



なぜか佐田さんをじっと見ているむっちゃんに、ひーちゃんが、
「話、続けるからね」
と、励ますように言う。



オレと佐田さんは、むっちゃんとひーちゃんの座席から通路を挟んで隣に座った。



「猟師さん達で村の捜索隊を作ったのは知っていますか?」



ひーちゃんに、オレと佐田さんは首を振る。



「失踪者があまりに多くて、その人達は帰って来ないから、捜索隊を作ったんです。山で遭難しているんじゃないかって、はじめは思ったらしくて」



そこまで話したひーちゃんは、
「あの、いなくなった二年生と、お友達なんですか?」
と、尋ねてきた。
< 28 / 120 >

この作品をシェア

pagetop