どこにもいかないで
「友達になりたかったけど、その前に失踪しちゃった」
と、オレの代わりに佐田さんが答える。
「あの、じゃあ、聞かないほうがいいかも」
「……」
オレは少し黙って、でも、
「……それでも、聞きたい」
と、お願いした。
ひーちゃんは少し考えて、「わかりました」と言い、続けた。
「捜索隊にいる兄貴が見つけたんです。その失踪していた駒澤って人の、ご遺体」
「うん」
「そのご遺体、獣が食べた感じじゃなかったって。兄貴はハッキリ言わなかったけれど、獣の引っかき傷もなかったらしいし、なんか……」
「?」
「……体の一部に残っていた噛み跡が、獣のものとは思えなかったって」
「え?」
「それにお腹の部分を刃物で……、その、刃物で切っ……」
そこまで言ったひーちゃんを、むっちゃんが、
「いや、いいよ! それ以上は! 想像できたから」
と、止めた。
(獣は刃物なんか使わない)
山姥の仕業?
もしかして山姥なんか関係がなくて、事件に巻き込まれて殺されたのか?