どこにもいかないで
「えー、佐田さんがいつもひとりでいるなんて、オレは勿体ないと思うよ?」
「そうかな?」
「いやー、じゃあさ、オレと友達になんない?」
「いいよ」
「オレとしては恋人でもいいよ? 佐田さん可愛いし、全然大丈夫っていうか」
……は?
何言ってんの、こいつ。
(軽っ)
オレは思わずバス停のベンチまで行って、ふたりのそばに座った。
「何? 今オレら、ちょっと大事な話してんだわ」
坂東くんは眉間にシワを寄せて、
「悪いけど、次のバスに乗ってくんない?」
と、片手でシッシッとオレを追い払う仕草をしてみせる。
その時、佐田さんが、
「あれ? 高浜くん、今帰り?」
と、顔を輝かせた。
「え?」
思わず聞き返してしまう。
「私も一緒に帰っていい? 高浜くんと帰りたい」
オレは急激に嬉しくなって、
「いいよ、一緒に帰ろう」
と、佐田さんに言う。