どこにもいかないで
「は? ちょ、何言ってんの? オレと帰ろうって話じゃん」
佐田さんの肩に手を回す坂東くんに、佐田さんはニッコリ笑って、
「いらない。あなたといてもちっとも楽しくないから、あなたのことはいらない」
と、言った。
(わっ、ハッキリ言うんだ)
思わず坂東くんが可哀想になるような、意志の強い言葉だった。
坂東くんは顔をひきつらせて、
「は? 別にいいし。お前レベルの女子なんか、オレは好きにならないし」
と、言い捨てて、学校のほうへ戻って行った。
「いいの? あんなこと言って……」
思わず聞いてしまう。
佐田さんはクスクス笑って、
「いいの! 私は、私が一緒にいたい人といる! それだけだから」
と、言い切った。
(カッコいい……)
オレなんか、それが出来なくて。
いつもひとりでいるけれど。
本当は寂しくて。
(こんなふうになりたい)
と、思った。