どこにもいかないで
こんなふうに、強い人になりたい。
「高浜くん、大丈夫?」
と、佐田さん。
「え?」
「ずっと教室で寂しそうだったから」
(見てたんだ?)
恥ずかしさと嬉しさが混ざったような、よくわからない気持ちになる。
「何か話したいこととか、気を紛らわしたいことがあったら、私に話してね」
佐田さんはニッコリ笑った。
(好きだ)
そう思った。
(あぁ、オレ、佐田さんのことが好きなんだ)
その強さも。
美しさも。
優しさも。
オレにはなくて。
憧れる。
オレもそうありたいと、願っている。
強く、優しい、美しい人になりたい。
佐田さんの隣にいられる人になりたい。
「あれ?また顔が赤いよ?」
と、佐田さんが意地悪な顔をする。
「え、嘘。いや、別に赤くなってないよ」
「もー、そうやってすぐ照れる!余計に赤くなっているんだからね」