どこにもいかないで

(でもあんまり詮索したら、嫌われるよな)



そう思って、オレも佐田さんに手を振り返し、家に帰った。






事件が起きたことを知ったのは、翌日だった。



週末で。

学校も休み。

のんびりと朝寝坊して起きてきたら、父さんの姿がなかった。



リビングにいる母さんに、
「父さんは?」
と、あくびをしつつ尋ねると、母さんはオレを見て迷ったようにこう言った。



「……自治会館で集会」

「え? 集会?」



なんで、と聞こうとして、ふと、頭によぎったことを聞いてみた。



「まさか、また失踪者が出たの?」



母さんは頷き、
「隣の村の坂東くんって知ってる? 滉と同級生だよね?」
と、(かす)れた声で言う。



「坂東くん? ……えっ、まさか」

「そのまさかだよ」



母さんはオレをまっすぐ見る。






「坂東くんが昨日の夜から失踪しているんだって」






なんで?

駒澤くんに続いて、坂東くんも?



「隣の村の人も自治会館に集まって、話し合っていると思う。……本当、怖いよね。何がどうなっているんだか……」
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