どこにもいかないで

(佐田さんと仲良くなりたい)



そう思う。

でも。



(中途半端に関わるなら、佐田さんを傷つけるんじゃないか?)



佐田さんの後ろ姿を見ながら、葛藤する。



(あぁ、こんな時に誰か相談出来る人がいたらな)



駒澤くんがもし、隣にいてくれたなら。

オレは情けなさを感じつつも、この恋心の悩みを打ち明けたはずだ。

その悩みに答えが出なくても。

万が一、突き放されたとしても。

相談出来たことに対しての、安心感に似た気持ちでいっぱいになったんじゃないかな。



(そうか、オレ……)



恋バナしたいんだ。

駒澤くんと。




サラサラと風に遊ばれている佐田さんの黒髪を見ながら、
(この気持ち、駒澤くんに話したかったな)
と、心から残念に思った。



昇降口の前。

佐田さんはふいに立ち止まった。

照れ臭くて、何となく隠れてしまった。



佐田さんがキョロキョロとして、周りをうかがっている様子を見せたので、見つからないように彼女をこっそり見ることにした。
< 40 / 120 >

この作品をシェア

pagetop