どこにもいかないで
(佐田さんと仲良くなりたい)
そう思う。
でも。
(中途半端に関わるなら、佐田さんを傷つけるんじゃないか?)
佐田さんの後ろ姿を見ながら、葛藤する。
(あぁ、こんな時に誰か相談出来る人がいたらな)
駒澤くんがもし、隣にいてくれたなら。
オレは情けなさを感じつつも、この恋心の悩みを打ち明けたはずだ。
その悩みに答えが出なくても。
万が一、突き放されたとしても。
相談出来たことに対しての、安心感に似た気持ちでいっぱいになったんじゃないかな。
(そうか、オレ……)
恋バナしたいんだ。
駒澤くんと。
サラサラと風に遊ばれている佐田さんの黒髪を見ながら、
(この気持ち、駒澤くんに話したかったな)
と、心から残念に思った。
昇降口の前。
佐田さんはふいに立ち止まった。
照れ臭くて、何となく隠れてしまった。
佐田さんがキョロキョロとして、周りをうかがっている様子を見せたので、見つからないように彼女をこっそり見ることにした。