どこにもいかないで
気づかれなかったみたいで、足音はそのまま昇降口のほうまで去って行った。
誰にも見られないように、注意深く中庭に移動する。
(何がいらないんだろう?)
やめておいたほうがいい。
気になるとはいえ、好きな子が捨てたものを拾うなんて……!
頭ではわかっているけれど、オレは中庭の草むらをかき分けていた。
そして見つけた。
草むらの中に捨てられたものを。
「な、なんで……?」
思わずそう言っていた。
だって。
そこにあったのは。
オレにも見覚えのあるものだったから。
あまり可愛くないブタのストラップ。
「駒澤くんが、スマホカバーに付けていたやつだ……」
背中にひんやり冷たいものが流れた気がした。