どこにもいかないで
(それでも、好きなんだ)
好きなのに。
きみを信じられない。
(佐田さん、きみは誰なんだ?)
翌日。
二年一組の教室。
みんなは変わらずにおしゃべりをしていた。
行ったり来たりの、その波に。
オレはやっぱり乗れない。
しばらくして、佐田さんがやって来た。
オレと目が合うと、ニコニコ笑ってくれた。
(変わらない態度で接するようにしないと)
そう思えば思うほど、オレの態度はぎこちなくなってしまう。
自分の不器用さを心底呪う。
昼休み。
お弁当を食べ終わった頃。
佐田さんがオレの席までやって来た。
「……なんか、今日の高浜くん、変だよ」
「え?」
「何かあったの?」
佐田さんの真っ黒の美しい瞳が、じっとオレを見ている。
「何もないよ」
そう答えても、
「嘘。わかるよ、嘘ついてるって」
と、佐田さん。
「……何もないって」