どこにもいかないで
駒澤くんは、オレと同じようにいつもひとりでいる。
いわば、ぼっち仲間だ。
いつも教室でイヤホンを付けて音楽を聴いているような人で。
丸いメガネをかけた小柄な体型。
スマホカバーにあまり可愛くないブタのストラップを付けていた。
……今まで話したことはないから、その存在に気づいても話しかけない。
外靴を取り出し上靴を脱いでいると、
「……みんな、話しかけてたね」
と、駒澤くんが言った。
「え?」
「……あ、ごめん。オレ以外に教室から出て来たのって、高浜くんだけだったから、つい……」
と、駒澤くんは俯いた。
「あ……、あぁ、うん」
「思わず話しかけちゃった、ごめん」
「いや、別に……」
駒澤くんは俯いたまま外靴を履き、
「じゃあ、また明日」
と、そそくさと歩いて行く。
その後ろ姿に向かって。
「ま、またな」
発した声が、裏返るかと思った。