どこにもいかないで
「ごめんね。止められないんだ」
「……」
「お母さんのことも、私自身の空腹だって」
「えっ……?」
澪はまた俯いて、
「お腹が空いたままじゃ、私だってつらいもん。私だって死んじゃうもん」
と、小声で言った。
「そんな……!」
助けてくれた駒澤くんを、きみも食べたのか……!?
「……何か言ってよ、高浜くん」
駒澤くん。
怖かったよな?
痛かっただろうし、つらかったよな?
なんでって思うよな?
……ごめん。
ごめんな、駒澤くん。
なんでって思われてもさ。
それでも、オレ。
この人が。
目の前の彼女のことが。
やっぱり好きなんだ。
「高浜くん、怒ってもいいんだよ」
「怒ってるよ」
「ひどい言葉でなじってもいいんだよ」
「そんなの、意味ないよ」
オレの目から、ポタポタと涙が落ちた。
「泣かないでよ」
と、澪はオレを見て言う。