どこにもいかないで
澪を連れて、徒歩で山を下りようと思った。
道は知っているし。
時間はかかるけれど。
その分、ゆっくり話せる。
澪はオレの後ろからクスクス笑ってついて来る。
「何?」
「あ、ごめん。だって、高浜くん」
「ん?」
「後ろから見ててもわかるくらいに、真っ赤な顔しているんだもん」
「えっ!」
と、思わず振り返ってしまった。
「ほら、真っ赤!」
澪は嬉しそう。
その瞳に涙の影はもうなくて。
オレは心から安心した。
山を下りていく途中。
澪は、
「ねぇ、どこに行きたい?」
と、聞いてきた。
「どこって?」
「一緒に行く、遠いところの話!」
ワクワクしているのか、頬のあたりがほんの少し、血色が良くなっている。
そんな澪にオレは、
「きみが行きたいところでいいよ」
と、伝える。
「それじゃ、ダメだよ」
「ダメかな?」