どこにもいかないで
「高浜くんにとっても行きたい場所じゃないと、意味がないよ」
澪は少し拗ねたような声で、そう言った。
「そうだよな、ふたりで行くんだもんな。ごめん」
「わかれば良し!」
あはははっと笑う澪は、繋いだ手を一度離し、またそっと手を繋いできた。
指と指がからまった。
思わず、ドキドキしてくる。
細くて、少し冷たい澪の指に、オレの全神経が集中する。
好きだって伝えたい。
そう思った。
(オレの気持ち、もうわかっているのかな?)
そうだとしても。
きちんと言葉で伝えなくちゃ。
澪の目を見て。
オレの気持ち、ちゃんと……。
そう思っていると。
ふと道の向こうにしゃがんでいる女の人を見つけた。
具合が悪そう。
お腹をおさえて。
じっとしている。
「ちょっと待ってて」
と、澪に伝える。
「高浜くん?」
澪の手を離し、オレは女の人のもとへかけ寄った。