どこにもいかないで
駒澤くんが振り向き、ぎこちない仕草で片手をあげる。
オレも駒澤くんに負けないくらいのぎこちなさで手を振った。
バス停でも一緒になるかな?
もしそうだったら、気まずいかな?
いや、でも駒澤くんって隣の村に住んでるよな?
オレの通っていた小学校にはいなかったし……。
そういえばどっちの村に住んでいても、家が山のそばだったら、徒歩で帰っているって聞いたことがある。
(あ……)
オレ、今、焦った。
駒澤くんのことを、走って追いかけて。
また話したいって思っているんだ?
(そっか。オレ)
友達になりたいって思ってるんだ?
あんなにぎこちない会話しかしていないのに。
でも。
話しかけてくれたことが、こんなにもあたたかな気持ちを連れて来てくれるなんて。
(寂しかったんだ)
ずっと。
気づかないフリをしていただけなのかもしれない。
誰かと話したかったんだ。
誰かと一緒に帰りたかったんだ。