どこにもいかないで
「坊や!あんたが逃げたら、この子を殺すよ!!」
「!!」
澪の母親は、澪を盾のようにしている。
「自分の子だからって、食べないとは限らないんだから!」
信じられない言葉に、頭の中が真っ白になる。
「何せ私はお腹が空いて、イライラしているんだ!!」
「いいから、逃げて!!」
澪が震える声で叫んでいる。
「坊や、澪を生かすも殺すも、あんた次第だよ!!」
「っ!!」
「どうするんだ!? 私と一緒に来れば、澪は助けてやるよ!!」
そう叫ぶ彼女の顔が、体が、どんどん乾燥していく。
みるみる内に全身がシワだらけになって。
美しい髪の毛も、ボサボサになり。
着ている服も、泥がこびりついたみすぼらしい服に変わる。
(……これが、山姥……)
山姥はかすれた声で、
「あはっ、あはははっ!」
と、笑い始めた。
何が可笑しいのか、笑い続ける山姥に、
「やめて、お母さん……」
と、澪が言う。