どこにもいかないで
一緒にいてくれた。
そばにいてくれた。
思っていることは、意外とハッキリ伝えてしまう子で。
その心は強くて、美しい。
でも、寂しそうで。
この子のことを、オレは何にも知らない。
でもこれだけ知っているなら、充分じゃないか。
……笑っていてほしい。
オレの隣で。
ずっと。
好きだから。
この気持ちは本物だから。
「……どこにもいかない。オレはきみのそばにいる。だから疑わないで、オレの気持ち」
「高浜くん……」
「そばにいるって約束したから。だからさ、澪。……逃げる時は、きみも一緒だよ」
澪の美しい瞳が。
少し揺れて、戸惑っていたけれど。
「……わかった」
と彼女は頷き、オレの手を握り返した。
今いる部屋に隣接している台所を通らないと、出入り口のドアのところまで行けない。
「どうやって外に出る?」
と、オレは澪に問う。