どこにもいかないで

走って。

校舎から出る。

普段は何も思わないこの校門までの道のりも。

なんでかな?

ずっと長くて。

ずっと輝いて見える。



(駒澤くんに話しかけることが出来たら)



走っているからなのか、興奮しているからなのか、鼓動がドキドキと踊りだす。



(友達になりたい)



……なんだ。

こんな気持ちだったのかな。

佐田さんに声をかけようとしていた女子達も。

佐田さんを囲んでいた、あのクラスメイトの輪も。



悪い気持ちなんか、ちっともない。

ただ単純に、話したかっただけなのかも。

今のオレと、おんなじ。

友達になりたいって思っていただけなのかも。



(毒づいて、ごめん)



クラスメイトみんなに向けて、心の中で謝る。



校門を抜けて。

バス停までの一本道。

そこに駒澤くんの背中は見えない。



(もうバスに乗ったとか?)



いや、バスがやってくるには、もう少し時間があるはず。

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