どこにもいかないで

「!?」



オレが呼ばれている。

大人の男の人達の、太い声で。

何度もオレの名前を呼んでいる。



(村の猟師さん達の、捜索隊だ!)



「高浜くーん!!どこだーーっ!?」






「……いけない」
と、澪が呟く。



「いけない? 何が?」

「状況が悪化した」

「なんで? 助けが来たのに?」



捜索隊の人達に返事をしたくなる。

オレ、ここにいます!!って。



「お母さんに気づかれてしまう」



そう呟いた澪の肩は、小刻みに震えていた。



「高浜くーーんっ!! 高浜 滉くーーーんっ!! どこにいるんだーーー!? 返事をしてくれーーーっ」



「やめさせなくちゃ……! あんな大声で、居場所がわかるような真似して、お母さんが気づかないわけがない!」

「え?」



てっきり澪はオレ達のことを心配していると思っていたけれど。

どうやら捜索隊の人達の身を案じているようだった。
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