どこにもいかないで
「お母さん、もうやめよう?」
と、澪が泣き出した。
「はぁっ!?」
「私、もう嫌だよ! こんな生活、ずっと続けていくなんて、嫌!!」
「あんたが嫌かどうかなんて関係ないんだよぉぉぉおお!!」
澪の母親が絶叫した。
その声が外の捜索隊にも聞こえたらしく、オレを呼んでいた声が止んだ。
「黙って、その坊やをよこしな! 私はお腹が空いているんだよおぉ!! これ以上イライラさせるんじゃないよ、このグズがあぁあぁああ!!!」
怖い。
怖くて。
恐ろしくて。
逃げ出したい気持ちでいっぱいになる。
(でも)
オレの前に庇うように立っているこの子を、オレが守らなくちゃ。
そう思ったオレは、澪の前に立つ。
「高浜くん、ダメだよ!」
「きみにばっかり、つらい目に遭わせたくない」
オレの声は情けなく震えていた。
それを聞いた澪の母親は、
「あはっ、あはははっ!」
と、笑う。