どこにもいかないで
「生きたいんだ!……好きだから!」
オレはまっすぐ澪の母親を見て、大声で答える。
声は震えてしまったけれど、堂々と伝えた。
そんなオレをじっと見つめて、
「話にならない」
と、澪の母親は床に唾を吐いた。
「澪、人間と生きるなんて無理だよ」
母親の言葉に、澪はビクッと肩を震わす。
「あんたのために言ってるんだ。ここで食べて、すっきり忘れたほうがいい。美味しく食べて、終わり。それでいいじゃない」
「……お母さん、やめて」
「気の迷いなんだよ、お前の恋心も、坊やの気持ちも!! そんな不確かなものにすがって、あんたは生きていけない!!」
「嫌……! 高浜くんと、私の気持ちが気の迷いだなんて、決めつけないでよ」
オレは澪を見る。
「オレ達はふたりで、ここじゃないどこかへ行って、やり直すんだ」
澪もオレを見つめて、頷いた。
「……だから生ぬるいって言ってるんだ」
と、澪の母親の目が据わる。