どこにもいかないで
だって。
オレの知っている澪の声じゃない。
掠れた声。
年老いた、おばあさんの声。
澪がさっきまで立っていた位置に。
全身シワシワの、おばあさんが立っている。
「!!!」
これが。
澪の正体。
山姥の姿……!
澪は部屋の中を走って。
母親の元へ行く。
部屋の中に入って来た捜索隊の人達は、
「きみ、高浜くんだね!?」
と、オレのそばに寄る。
オレは捜索隊の人達に無言で頷き、心のどこかでホッと安心している自分を見つけた。
見ると、天井に穴が開いている。
さっきの銃声は威嚇射撃だったのかと、わかった。
澪は母親の前に立つ。
捜索隊の人達に向かって、
「見逃してください」
と、言った。
「お願い、見逃してください……!お母さんは身重の体なんです!」
捜索隊の人達は顔を見合わせて、
「そうはいかない」
と、答えた。