どこにもいかないで

(徒歩で帰ったのかな?)



しょんぼりした背中をほんの少しだけ丸めて、オレはバス停までの一本道をトボトボ歩く。






家の前まで帰って来ると、四つ年上の姉貴が玄関前でスマートフォンを耳に当てている。


「えー、やだぁ。……うん、うん。じゃあ、もう切るからね? 本当に電話、切るからね?」



(彼氏だな)



2トーンくらい高い声で、
「じゃあね、バイバイ」
と、電話を切った姉貴がふいに振り返った。




「げっ」

「『げっ』じゃねーよ」

「……聞いてた?」

「聞こえた」

「げっ」



思いっきり眉間にシワを寄せて、
「あんた、マジでお父さんには内緒にしてよね」
と、念押ししてくる姉貴。



「いや、興味ないから」

「あんたに興味なくても、お父さんに知られたら大変なことになるくらいわかるでしょ?」

「反対されるような彼氏と付き合ってんの?」

「ばっか。違う! こんな可愛い娘に彼氏がいるなんて知ったら、お父さんが卒倒しちゃうって話」

「ばっかじゃない?」
と、オレ。
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