どこにもいかないで

澪の顔がさっと青くなる。



オレは、思った。

澪達と自分達の間にある境界線が見えたみたいだなって。



澪と澪の母親。

オレと捜索隊の人達。



その間には、目には見えなくても。

完全に境界線が存在する。



(それを飛び越えたかった)



オレは。

澪との境界線なんか消したかった。







「今更、命乞いをするのか? この部屋を見ればわかる。村の人間を食べていたんだってな! そんなお前らが、今更?」

「ご、ごめんなさい……!! あ、謝る、から!! 命だけは、せめて、……お母さんと赤ちゃんの命だけは、助けてください……!!」



澪は涙を流して、おでこを床にすりつける。



「山姥の言うことなんか、信用できない!」
と、捜索隊の若い男性が言った。



「オレは見たんだ! 山で、あんたらに食べられた後の少年の遺体を!」

「……!」



(それって、駒澤くんのことだ)
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