どこにもいかないで

澪の母親が、向けられた猟銃に手を伸ばした。

ぐぎぎっと嫌な音を立てて。

猟銃を折り曲げてしまう。



「!!!」



その場にいた全員が、ハッとした。




「このっ、化け物め!!!」
と、年配の男性が叫んだその時。



澪の母親は、その男性の首を掴んだ。



「ぐうっ!」
と、のどが詰まったような声をあげた男性を、澪の母親はニンマリと笑って見つめる。




そして。

大きな口をぱっかりと開けて。






男性をそのまま、頭から丸飲みにしてしまった。








「っ!!!」





ばりばりと音を立てて咀嚼しつつ、澪の母親は満足そうにゲップをして、こう言った。






「まだお腹が空いて、たまらないんだよねぇ」













その場の空気が、ひんやりと冷たいものに変わった。











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