どこにもいかないで
部屋の中央。
澪の母親が、倒れている。
体のあちこちから、血を流して。
「かはっ、かはっ」
と、小さく咳をしている澪の母親。
その度に血を吐いている。
「お母さんっ、お母さんっ!!」
と、澪がそのそばに行って、膝をついた。
澪の母親は、
「……っ」
と、何かを言ったけれど、
「何? 何て言ったの!?」
澪には届かなかった。
澪の母親の瞳が。
宙を捉えたまま。
光を失った。
「やだぁああっ!! お母さんっ!!!」
澪が泣き叫ぶ。
「……お前も、生かしてはおけない!!」
と、坂東くんのお父さんが言う。
オレはハッとして、
「待ってください!」
と、澪の前に立ち塞がった。
「!? そこをどきなさい!!」
と、猟師さん達が言う。
「この子は見逃してくださいっ」
オレの言葉に、
「何を言っているんだ!」
と、疋田さんが信じられないという顔をした。