どこにもいかないで
「澪っ!!!」
オレの血の気が引く。
目の前で起きたことに、目を背けたいような気持ちに、一瞬だけなった。
澪が。
お腹の部分をおさえて。
倒れている。
「澪っ!! 澪っ!! しっかりして!!」
オレは血だらけの澪の体を抱き起こす。
「……かはっ」
と、澪が血を吐く。
「高浜くんっ、離れろ!!」
と、坂東くんのお父さんが言う。
「まだ、そいつは生きている!! 危険だから!!」
涙を流すオレに、捜索隊の人達は怪訝な顔をして、
「山姥に取り憑かれているみたいだ……」
と、呟いた。
澪の手が、ゆっくりオレの頬に伸びてくる。
オレはその手を掴んで、自分の頬に当てた。
「……澪、しっかりして」
澪は涙目で力無くクビを振って、
「……好きだった」
と、呟いた。
「っ!」
「好きだった、高浜くんが」