私の「光健士(ひかるけんし)」くん~社内で孤立の二十九歳主任を慕い、ひたすら尽くして応援する十八歳のアルバイトくん
恭子は間違っていないのに
営業企画部第一グループの事務室。主任がいないと、こんなにも職場の雰囲気は変わるんだろうか?外に出ている社員を除く十人の社員たちがくつろいだ様子で話をしている。
営業部第一グループの山崎が話の中心だ。軽薄モードが全身からオーラを放つ残念なイケメンである。
「だからそのババアさ。オレに向かって手を合わせて泣きながら……」
ドアが開いた。一瞬のうちに第一グループ事務室の空気が、ピリピリしたものに変化する。
恭子が山崎の前に立つ。
「山崎さん。よく大切な顧客の悪口を言えますね。私たちの会社は零細企業や個人商店の人たちに寄り添ってここまで大きくなったこと分かってますか?その人たちにとっては、私たちが最後の砦だということ理解していますか?」
「主任。すみません。オレ、ジョークのつもりで……」
「『俺』じゃなく『私』か『僕』でしょう。それから『すみません』じゃなく『申し訳ありません』。今のジョークは全く面白くありません。あなたの人間性を疑います」
社員たちが不満な表情で顔を見合わせているが、何か反論出来る人間はひとりもいない。
「山崎君。今度、同じ言葉を聞いたら処分します」
女性社員の須藤みなみが立ち上がった。
「主任。第二グループでは……」
「第二がどうしたんですか?順序だてて説明してください。第二グループでは顧客を嘲笑ったり悪口を言ったりしているんですか?」
みなみは沈黙。
恭子は自分のデスクの上の、大きなビジネスバッグを手にした。
「緊急会議があるので行ってきます」
ドアが閉まった。山崎が敵意に満ちた表情で舌打ちした。最悪のムードである。
営業部第一グループの山崎が話の中心だ。軽薄モードが全身からオーラを放つ残念なイケメンである。
「だからそのババアさ。オレに向かって手を合わせて泣きながら……」
ドアが開いた。一瞬のうちに第一グループ事務室の空気が、ピリピリしたものに変化する。
恭子が山崎の前に立つ。
「山崎さん。よく大切な顧客の悪口を言えますね。私たちの会社は零細企業や個人商店の人たちに寄り添ってここまで大きくなったこと分かってますか?その人たちにとっては、私たちが最後の砦だということ理解していますか?」
「主任。すみません。オレ、ジョークのつもりで……」
「『俺』じゃなく『私』か『僕』でしょう。それから『すみません』じゃなく『申し訳ありません』。今のジョークは全く面白くありません。あなたの人間性を疑います」
社員たちが不満な表情で顔を見合わせているが、何か反論出来る人間はひとりもいない。
「山崎君。今度、同じ言葉を聞いたら処分します」
女性社員の須藤みなみが立ち上がった。
「主任。第二グループでは……」
「第二がどうしたんですか?順序だてて説明してください。第二グループでは顧客を嘲笑ったり悪口を言ったりしているんですか?」
みなみは沈黙。
恭子は自分のデスクの上の、大きなビジネスバッグを手にした。
「緊急会議があるので行ってきます」
ドアが閉まった。山崎が敵意に満ちた表情で舌打ちした。最悪のムードである。