私の「光健士(ひかるけんし)」くん~社内で孤立の二十九歳主任を慕い、ひたすら尽くして応援する十八歳のアルバイトくん

年下の友だち

 「おはようございます」

 いつもの声が聞こえてくる。小声だけれど礼儀正しく、優しい性格が表れている。
 午前七時四十五分。恭子が自宅のコーポを出て、徒歩で神の倉駅に向かう途中だった。
 恭子は女性にしては背が高いといわれる。一m八十六cm。髪型はボブで、眼鏡の奥に鋭い目。好意的に見た場合、キリリとした印象を受ける。
 ただしそう思わない人だっている。彼らから見れば、口うるさくて厳しくて、高圧的で誰からも嫌われるタイプ。
 ベージュのスーツにスカート、そしてブラウンのガーターストッキング。ショルダー式の大きなビジネスバッグはいつも重そう。
 駅の近くでいつも挨拶をしてくるブレザーの制服姿の少年。恭子がよく知っている人間である。
 名前は日下健士(くさかけんし)。高校三年生だが、どこの高校か聞き忘れたままになっている。背は低く一m六十cmもないだろう。髪をきちんと整え、柔和な表情。おちょぼ口で、話をするとき、いつも恥ずかしそうな顔をしてみせる。舌っ足らずの口調なので、年齢より幼く見えた。
 
 恭子は落ち着いて朝の挨拶を返す。

「日下くん、おはようございます」

 
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