魔女さんとナイト

訪問者

　背中に強い衝撃があって、思わず膝をついた。

「化け物！」

　三人の男たちが私を睨んでいる。石か何かを投げられたのだ、とようやく気がついた。

　男たちは口々に言った。

「まだこんなところにいやがった」
「早く追い出さねえと、お前んとこの女房も子供も食われちまうぞ！」

　私は人を食べたこたなんか一度も無い。その男の奥さんと子供は、多分、彼の行動──酒癖の悪さや暴力──を恐れて逃げ出したのだと思う。

　オオカミの幻覚を見せて追い払おうか。でも、今の私にそんな力は残っていない。

「おら！」

　その男は自分の拳よりも大きな石を振りかぶって、こちらに投げて来ようとする。

　咄嗟にぎゅっと目を瞑ると、がつんと音がする。

　けれど、私に痛みは無い。

「──大丈夫ですか？」

　私を庇うように立っているその人は微笑んで言った。

　割れた額から、血をだらだら垂れ流しながら。
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