魔女さんとナイト
 怪我をしたのが頭部だったから血がたくさん出ただけで、傷自体は大したものではない。とりあえず安心する。今は力が戻っていないから、こんな小さな傷すら魔法で治すことができない。

 とりあえず家に招き入れ、簡単な手当をすると、

「助けるつもりがまた助けられてしまいました」

 彼は困ったように笑った。その言葉に何か引っかかりを覚えたけれど、よくわからないまま流してしまった。

「いえ。……ありがとうございます」

 効果は絶大だけれど、かなり染みる薬を使った。それなのに彼は呻き声ひとつ上げない。こうして手当を受けていることの方がよっぽど痛いみたいに。

「オレも手当しますよ、さっきのところ……あ」

 手当をするといっても場所が場所だ。ワンピースをたくしあげて背中を見せないといけない。そのシチュエーションのまずさに気づいたらしく、彼は顔を赤くして俯く。

「だっ大丈夫です、全然大したことないですから……」

 なんだか変な空気になってしまった。
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