処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました

プロローグ

 青々とした新緑に、日光が降り注ぐ。
 暖かくカラッとしていて、洗濯には最高の日だ。午前中に干したタオルは、午後三時の鐘が鳴り響く今、カラカラに乾いている。
 ランドリーメイドのアメリは、たたんだタオルを両手で抱えて、洗濯場と城を繋ぐ回廊を歩いていた。
 風が頬を撫でて気持ちいい。タオルからほのかに感じる太陽の香りに、アメリは笑顔になっていた。

(いい季節になったわね)

 そんなウキウキした気分は、鍛錬所の方から聞こえた爆音によって一掃された。

「きゃあっ」

 思わずタオルを落としそうになり、大きな声を上げてしまった。声に気づいてか、メイド仲間のジャニカが駆け付けてくれた。

「大丈夫? アメリ」
「なんとか、セーフかな」
「今から洗い直しは嫌だもんね。よかったー。あ、ほら、見て」

 ジャニカが指を差したのは、騎士団の鍛錬所がある方向だ。うっすらと煙が上がっている。

「あれって……」
「……大公閣下、だよね」

 続いて、『たるんでる!』という怒号が風に乗って響いて来た。おそらくは騎士団の面々が、ルーク大公閣下のしごきを受けているんだろう。

「ルーク様の魔法剣かぁ。すごいよね」
「そうね。あれのおかげで、戦争は短期間で収束したんだもんね」
 
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