処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
 であれば、前王にも、第一王子や第二王子にも、わずかながら魔力があったと考えられる。

「しかし巫女姫となるには、フローと波長が合う必要があった。たまたまだが、彼と波長が合う王族は皆、女性だったんだろうな」
《僕を女好きのように言わないでくれる? まあ間違ってはいないけど》

 フローが頷く。アメリは思わず手を上げて質問していた。

「じゃあ、魔力があるからルーク様には光の状態のフローも見えたってこと? 他の王族は見えてなかったのに?」
《魔力の質だけじゃなくて、ルークに欲が無いからってのもあるとは思う》

 そう言えば、精霊は人間の欲が苦手だと言っていた。

「だが、どうして急に、声まで聞こえるようになったんだ?」

 ルークは不思議そうにしている。

《魔力をもらったからじゃないかな。君と僕がつながったってことだよ》
「私は最初から聞こえたよね?」
《アメリは子供の時から一緒にいたから。多分無意識に少しずつ魔力をもらっていたんだと思う》
「それにしても、一度にふたりの巫女姫が存在するなんてな」
《しかも、ルークは初めての男の巫女姫だね》

 フローがカラカラと笑う。

(え? 笑いごとでいいの……?)

 アメリは焦ったが、ルークは気にしていなさそうだ。

「フロー。カーヴェル卿は巫女姫じゃないんだよな……?」
「カーヴェル卿?」

 アメリは小首をかしげる。それは確か、テンバートン侯爵の屋敷での夜会の主役の名ではなかったか。

「そう。カーヴェル卿は精霊の声を聞き、金脈を見つけたと言っている」
「金脈?」
《それは嘘だ。金鉱石なんて、この国にはほとんどないよ》
「だが、カーヴェル卿はすでにいくつもの金鉱石を掘り出しているようだが」

 フローは難しい顔で腕を組む。

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