処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
 《このパペットは、ローズマリーが作ったものなんだけど、なぜかここにいると魔力が奪われにくい。だから、ずっとこのパペットの中で眠っていた。消えずに済んだのは、これのおかげなんだ》
「そうだったの……」
「……結界魔法みたいだな」
「え?」

 ルークがパペットを眺めて言う。

「レッドメイン王家に伝わる魔法に、結界魔法というのがある。守護の力に適性が無いと、扱えない魔法だ。パペットを取り巻いているのは、その魔法に近い。おそらくローズマリー姫は守護の力に長けていたんだろう」
「なるほど」

 習ったわけではないから、無意識にかけた魔法なのだろう。でもそれが、フローを守ってくれたのだ。

「とにかく、精霊石を取り戻せればいいってことだな」
《もしくは壊すか……だね。今は巫女姫がふたりいるから、精霊石が無くなっても、僕は消えないと思う。呪いが解ければ、フローライトも元通りにとれるようになると思うし》
「そうか……」

 ルークの顔に、安堵が浮かんだ。それは彼のそばに仕えるようになって、初めて見た表情のような気がする。

(きっと、ずっと気を張っていたのね。この国の復興のために……)

 自分が生まれた国というわけでもない。王となることだって、本当は望んではいなかったかもしれないのに、ルークはずっとこの国のことを本気で心配していてくれたのだ。

(だったら、私も……)

 ルークの力になりたい。
 アメリの中に、そんな気持ちが生まれてきていた。
 これまで、面倒は嫌だと思っていた。生まれた国とはいえ、アメリが守る義理は無いとも、思っていた。

(だけど、あなたが守ろうとしているのなら……)

 アメリも一緒に守りたい。そう、心の底から思えるようになった。

「では俺が、精霊石を取り戻すか壊すかしよう。だから、フローも俺に力を貸してはくれないだろうか」
《うん?》
「ボーフォート公国の復興に力を貸してほしいんだ」
《もちろんだよ。僕は昔からずっと、この国を守っている。前みたいに、皆に幸せに笑ってほしいし、フローライトを好きでいてほしいよ》

 人の想いが、フローの力になるのだから。

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