処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました

ルークの真意

 夜、アメリはいつものように毒見に向かった。どうせジャイルズ伯爵がいれば、フローが話に加わることもないので、パペットに入れて部屋に置いてきている。
ところが、呼ばれた部屋に入ると、中にはルークしかいなかった。

「あれ、ジャイルズ伯爵様はいないのですか?」
「ああ。奥方とゆっくりしたいだろうから、帰らせた。昼間のこともあって、俺に気も使ったんだろう」
「昼間の……?」

 言われて、アメリはようやく思い出した。
 ジャイルズ伯爵に、ルークに押し倒されているところを見られたのだった。

「あ、あれ……どう説明したんですか?」
「説明していない。ロバートは誤解したままだ」
「なんで説明しないんですかー!」

 アメリは怒ったが、ルークは平気そうだ。

「そのほうが、都合がいいからだ。フローの件もある。ふたりで相談すべきことも多いだろう。ふたりきりになるのに、俺たちが恋仲だと勘違いさせておいたほうがいい」
「それは……そうかもしれないですけど」
「それとも、君には誤解されたくない相手がいるのか?」
「そんな人はいません……けど」

 だけど、ルークの評判というものもある。
 ただでさえ、毒見と称して夕食を共にしているのが知られ始めているのだ。ジャイルズ伯爵の態度から、アメリがルークの愛人になったと思い込む人間も現れるだろう。

「奥方を娶る前から、メイドを愛人にしていたなんて言われるのは、ルーク様にとって良くありません」
「なぜ愛人なんだ。俺は独身なんだから、恋人と呼ぶものじゃないか?」
「それは私がメイドだからですよ」

 一国の王の相手が、使用人であっていいはずがない。最低限貴族でなければ、釣り合いがとれないだろう。

「君は、メイドじゃない」

 いつもより低いトーンの声。まるで怒っているような声に、アメリはびくりとしながら顔を上げる。

「ルーク様」
「巫女姫の娘だ。……いや、今は君が巫女姫だ。俺は、君の立場の回復させるつもりだ」
「え?」
「巫女姫は、この国に必要な存在だ。前王朝の血を引いている君なら、女王になっても問題ないだろう」

 アメリは一気に血が引いていくのを感じた。
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