処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
「今……なんで言いました?」
「いずれは君を女王にしたいと言った」
「ちょっ、正気ですか」
「もちろんだ」

 頭にカッと血が上って、気づけばテーブルを叩いていた。

「私はメイドです。血筋がどうであろうと、平民としてしか生きていないんですよ」

 ルークは驚いたようだ。目を見開いて、アメリを凝視している。

「私は、王族として生きたこともなければ、国への愛着もないんです。巫女姫の娘だということも、ずっと隠して生きて行くつもりだったんですから。それに、この国にはルーク様がいらっしゃるじゃないですか。ちゃんと国民のことをかんがえてくださる王がいるならば、私の存在はノイズになるだけです」

 話しているうちに、ルークの表情が沈んだ。まるで、突き放された子供のような心細げな顔だ。

「しかし俺は、いつかは王位を譲るつもりだった。最初は兄上の子にと思っていたが、巫女姫がいるなら巫女姫のほうがいい」
「なぜですか?」
「国民が求めているのが、巫女姫だからだ。俺なりに、この三年、国の復興にいそしんできたつもりだ。しかし、最終的に人は、巫女姫がいないことを嘆いていた。この国の民をひとつにまとめられるのは、やはり巫女姫なんだろう」

 本気で言っているのだろうか。アメリには理解できない。

「ここまで国を復興させたのはルーク様でしょう? 私はなにもしてない。フローが精霊石を探すのをただ見ていただけです。私は、戦争前もメイドとして勤めていました。あの時と今では全然働き方が違います。給金が上がり、夢も見れるようになった。ルーク様が王として、この国を過ごしやすい国にしてくれたんじゃありませんか」

 ルークの目が見開かれる。

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