処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
 気になって調べてみると、巫女姫は二十年前に失踪したらしい。しかも、巫女姫は王族からしか生まれないとされていたのだ。
 もう新たな巫女姫は生まれないのだと責められても、ルークにはどうすることもできなかった。
 であれば、失踪した巫女姫が生きていることに賭け、探し出すしかない。
 そんな思いで巫女姫を探していたから、アメリが巫女姫の娘だと知った時はうれしかったし、王位を渡すと言えば喜んでもらえると思い込んでいた。
 なのに、王位の譲渡の提案を、あんなに否定されるとは思わなかったのだ。

「拗ねてなどいない」
「拗ねているでしょう。原因はなんですか? 詳しくはわかりませんが、謝ってしまえばいいじゃありませんか」
「俺が悪いわけでもないのに、なぜ謝らなければならない」
「ルーク様、女性と気持ちがすれ違っているときは、話さないとこじれるだけですよ」

 ロバートが偉そうに言うのでまたむかつく。

「経験談か?」
「まあそんなところです」

 マルヴィナと結婚するまでは、自分だって右往左往していただろうにと思うと、今の余裕な顔に腹が立つ。

「男と女で、気持ちをわかり合うのは存外に難しいものです。ルーク様のお立場なら、無理やり命令で言うことを聞かせることはできるでしょうが、それをしたらもう、心は手に入りませんよ」

 腹は立つが、ロバートの言っていることは間違いではない。

「……アメリがなにを考えているのか、わからないだけだ」
「でしたら、聞いてみればいいじゃないですか。女性の心に一番響くのは、誠実さですよ」
「ふん。わかったようなことばかり言うな!」

 鼻であしらいつつ、ルークは立ち上がった。

「ルーク様。どちらへ」
「ついてくるな。ちょっと……散歩だ」
「はいはい。いってらっしゃいませ」

 ニヤニヤ笑うロバートの足を、思い切り踏んづけてやりたい気分になりつつ、ルークは部屋を出た。
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