処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
《実際に殺したのは王でも、原因となったのは〝僕の声を聞けたって言う事実〟だ。実際、ローズマリーは幽閉されてからは僕の声が聞えなくなっていた。僕を恨んでいたからだと思う。その母親を見て育ったアメリが、この国を愛せると思う?》 

 ルークは、胸がチクリと痛んだ。
 雑用係としてそばにいてくれた時、アメリは、ルークが過ごしやすいようにと、随所に気を配ってくれた。しかも、欲が無いのか大した見返りは求めない。
 思えば、ルークはそんな彼女に偶像を押し付けていたのかもしれない。
 誰かを恨むことなどないだろう、と。しかし彼女は、母親を国に殺されたようなものなのだ。憎んで当然。そこに思い至らなかった自分が情けない。

「……なぜ、巫女姫は純潔じゃなきゃ駄目なんだ?」
《純潔でいろなんて、言っていないよ。たまたま、最初の巫女姫が独身主義だっただけさ。でも、もう人間の間ではそういうものだと決められていて、僕が巫女姫から伝えてもらおうとしても、自分が結婚したいからそう言っていると思われただけで、制度を改めてもらえなかったんだ。人間って、一度思い込むとなかなか考えを変えてくれないよね》
「……そうか」

 ルークはようやく合点がいった。
 自分は、アメリに自分の意見を押し付けて、彼女の気持ちを考えてあげていなかったのだ。

(じゃあやはり、俺が悪い)

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