処刑回避したい生き残り聖女、侍女としてひっそり生きるはずが最恐王の溺愛が始まりました
* * *

 アメリが巫女姫の娘であることは、今のところ、ルークの胸の内に納めてもらうこととなった。アメリは安心して仕事に戻ったが、ルークのアメリに対する扱いは、もはや雑用係に向けるものではない。

「失礼します。掃除に参りました」
「ああ、アメリか。こっちに座るといい」
「聞こえませんでしたか? そ・う・じに参りました!」

 仕方なく、こちらがいなす形となるのだが、側近たちは、ルークを恐れないアメリの言動にざわつき、結局は親しい関係なのではないかと疑われる羽目になっている。

(……解せない……)
《まあ、いいじゃん。アメリは真面目過ぎるんだよ。ルークがいいって言うんだから、楽してればいいじゃないか》

 ルークにも存在がばれたので、フローは自由に執務室に出入りしている。ベリトに力を奪われているというのは本当のようで、一度は顔も体もはっきり見えたが、今はまた光の球の姿に戻ってしまった。
 パペットの中にいたほうが魔力を奪われにくいことから、パペットに憑いていることのほうが多いが、時々飛び出してきては、ジャイルズ伯爵の頭の上に止まったりするので、見えているのは自分とルークだけだとわかってはいても、ヒヤヒヤしてしまう。
 夕食も毎日のように共に取り、食事の作法は意識せず動けるくらいまでになった。

「カトラリーづかいは、ずいぶんうまくなったな」
「そりゃ、毎日見張られていれば、上達もします」
「はは。ダンスはまだまだだけどな」

 話慣れてくると、ルークは案外子供っぽいことがわかる。からかうようなことをよく言うし、ちょっと意地悪だ。だけど不思議と嫌ではなかった。
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