あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「め、メイド長……」

 途方に暮れたアメリは目で助けを求めるが、マーサはため息をついて首を横に振った。

「閣下自ら決めたことなら、私は逆らえないわ」
「そんなぁ」

 頼みの綱にも断られ、絶望がアメリを襲う。

「決まりだな。メイド長、皆にもそう通達しておけ。他のメイドは部屋に近づくなと」
「かしこまりました。でも、……本当に、アメリでいいのでしょうか」
「いい」
(よ、よくないですけど!)

 しかし、一介のメイドであるアメリに反論できるはずがない。

「ルーク様。引継ぎもありますし、彼女には明日より雑用係についてもらいます。よろしいですか」
「ああ。もう行け」

 ジャイルズ伯爵の問いにそう答え、ルークはこちらを向くこともなく、手でしっしっと追い払う仕草をする。

(ひどい。嫌がる私を無理やり雑用係にしておいて、この態度)
「下がりますよ、アメリ」
「は、はい……」

 ほかのメイドなら、大喜びでルークの雑用係を引き受けるだろうに、なぜ自分なのか。アメリは運の無さを呪いたくなる。

《いいじゃないか、あいつに近づけるってことは、精霊石も探しやすくなる》

 メイド服のポケットから、声がする。
(黙ってよ。フロー)
 アメリはポケットを叩いて、盛大なため息をつくのだった。

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