あなたがお探しの巫女姫、実は私です。

「変色したフローライトからは、こうした小結晶にしか取り出せないらしくてな。工夫してネックレスを作ってもらった」
「素敵ですね」
「俺のブローチがフローライトだから、揃えたほうがいいだろう?」

 以前アメリが選んだブローチを、ルークは好んでよくつけてくれている。
 今日は、アメリが選んだわけでもないので、自分で選んでくれたようだ。

「では行くぞ」

 終始優し気なエスコートをするルークに、メイドたちは黄色い悲鳴を漏らす。
 アメリとしては変な気分だ。ルークは普段もっと、つっけんどんな感じなのに。

「……なんか今日、変なものでも食べました?」
「女性をエスコートするときは、こうするものじゃないのか?」
「あんまりいつもと違っても、調子が狂いますが」
「ロバートに教えを乞いたんだ。さ、行こう、アメリ」
「はいっ」

 ルークの手のひらに、アメリも手を重ねる。指先が触れて、なんだかドキドキしてしまう。

(もう。やばいわ。手汗が酷い……)

 ドキドキして、なんだか自分が自分じゃないみたいにふわふわする。

(これはあれよ。いつもと違う環境だから、だからこう隣にいる人が頼もしく素敵に見えるだけで)

 恋なんてしてはならないと、アメリは必死に言い聞かせる。もうその時点で、恋に落ちていることにも気づかずに。

《僕も行くよ》

 フローの光が近づいてくる。

「フロー。パペットはいいの?」
《その格好でパペットなんて持てないだろ。ここに入れてよ》

 フローの光がペンダントの中に吸い込まれていく。

「でも大丈夫?」
《巫女姫のそばに居られれば、力を完全に奪われるってことはないと思う》
「無理はするなよ」

 ルークにも言われて、フローは《うん》と頷いた。
 廊下では、ジャイルズ伯爵が待ち構えていた。

「これはこれは、綺麗だな、アメリ」
「ありがとうございます」
「ああ。ルーク様が自ら女性をエスコートする日を見ることができるとは……」

 感涙の様子だ。さすがに毎回過ぎてアメリも面倒になってきた。

「さ、さっと終わらせてしまいましょうよ!」
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