あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「ちょ、ルーク様」
「なんだ、アメリ。本当のことだろう。俺にフローライトや精霊のことを教えてくれたのはお前じゃないか。お前は誰よりも価値がある。俺が、誰にも君を悪くなど言わせない」

 演技なのだろうが、愛情いっぱいの瞳でアメリを見つめながら、周囲には軽く睨みを利かせて牽制している。
 まるで本当に愛されているみたいで、心臓に悪い。
 真っ赤になって噛み締めているフェリシアの横に、カーヴェル卿が現れた。

「これは当てられましたね。フェリシア様。ルーク様、ようこそお越しくださいました」

 褐色の肌に細い釣り目。アメリは初めて見る人物だ。ネックレスからフローが動揺しているのが感じられる。
 カーヴェルはアメリに目を向けた。目が合った瞬間、ほんの少し既視感があった。

(あれ? 褐色の肌の知り合いなんていないはずだけどな……)

 じっと見つめると、カーヴェルは満足そうに微笑む。

「ルーク様、素敵なご令嬢をお連れですね」
「ああ。今後の貴殿の活躍も楽しみにしている」
「アメリ嬢? エルトン・カーヴェルと申します。細工物の商売を行っておりましてね。今は金を扱っております。あなたに似合いそうなアクセサリーも、たくさんそろえておりますよ」

 営業トークに入るカーヴェルを制すように、ルークが間に入る。

「悪いな、カーヴェル卿。彼女を飾る宝石は、すべて俺が用意したい。営業はこっちに頼めるか?」

 カーヴェル卿は目を一瞬見開き、にやりと微笑む。

「おやおや、ずいぶんとご執心なんですね。では、ペアのアクセサリーを今度ご紹介しますね」
「ああ。今日は多くの貴族と顔を繋がらなければならないのだろう? 俺のことはあまり気にしないでくれ。……テンバートン侯爵、楽しませてもらうぞ」

 そのまま、ルークはアメリを連れて、会場の奥へと向かった。テンバートン侯爵は更に数人の客を迎えた後、おおよそ招待者が揃ったのかカーヴェル卿を連れてホールが見下ろせる階段の中ほどまで上がった。
< 124 / 161 >

この作品をシェア

pagetop