あなたがお探しの巫女姫、実は私です。
「ふふふ。もしかして、フローが力を取り戻したのは君のおかげかな。ローズマリーの娘」
「……っ、知って?」

 母親の名前が出て来て、驚きと恐怖がアメリを襲った。

「お前……何者だ」
「自己紹介なら以前したでしょう。閣下。カーヴェルですよ。そしてかつての名は……」
「ドウェイン・ボーフォート」

 ルークとカーヴェル卿が同時に言う。

「……おやおや、それもわかっていたのですか。さすがですね、閣下」
「お前の目的はなんだ!」

 カーヴェル卿はにやりと微笑み、舌を出して唇を舐める。

「私は、人間の魔力と欲が好物でしてね。前ボーフォート公王は、欲にまみれたお方でとてもよかった。彼とは十年前に視察先で出会ったんですがね。フローライトに代わる鉱石が欲しくないかと聞いたら飛びついてきましたよ。すぐに契約し、私は彼に取り憑いた」

 笑ったまま話していることが、アメリには恐ろしく感じられる。
 なんの志もないまま、多くの人を不幸にしても、罪悪感など少しもないのだろう。

「彼の記憶から、ローズマリー姫が精霊石を持っていることがわかりました。ですからね、いただいたのです。弱っていたローズマリー姫の抵抗など、羽虫が寄ってくるようなものでしたね。ちょっと突き飛ばしたら、打ち所が悪く死んでしまいました。あっけないものです」

 母の死の真相をこんなところで聞かされて、アメリはカッとした。

「そんな、あなたが母様を殺したの?」
「いいえ。勝手に死んだのです。私は彼女から精霊石を頂いただけ。抵抗するのが悪いのですよ」

 蛇のような目からは、むしろ楽しささえあふれ出している。

「……っ」

 舌打ちと共に、ルークはアメリを抱く力を強める。

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